線虫とは?

線形動物門(Nematoda)に属する動物の総称です。
基本的には細長い形をしています。英語では、nematode またはroundwormです。
'nema'というのは糸のようなという意味です。また、roundwormと呼ばれるのは線虫の横断面が丸いからです。
多くの種類が、成虫でも長さは1mm程度と小さく、肉眼では見ることが難しい動物です。

昆虫と同様に成長には脱皮を伴うため、脱皮動物(Ecdysozoa)に分類されます。

生活環

線虫は基本的には卵として産下され、孵化した幼虫が4回脱皮をして成虫になります。そのため、発育ステージとして4つの幼虫(1期幼虫、2期幼虫、3期幼虫、4期幼虫)と成虫(オス成虫とメス成虫)に分けられます。
線虫の中には胎生のものがあります。また植物寄生性線虫は卵の中で2期幼虫にまで成長した後、孵化する種が多く存在します。

性と生殖様式

雌雄異体(オスとメス)による両性生殖が基本です。生殖様式も、モデル生物として利用されるCaenorhabditis elegans(C. elegans)のように雌雄同体で自家受精をする種や、農作物に大きな被害を引き起こすサツマイモネコブセンチュウMeloidogyne incognitaのように単為生殖を行う種も存在します。また、害虫の生物的防除に用いられる昆虫病原性線虫のHeterorhabditis bacteriophoraでは第一世代の成虫はオスかメスになり、第二世代では雌雄同体となるなど、環境条件によって性が変化する種なども存在します。

線虫の種類は?

現在までに2万種以上が記載されています。体サイズが小さく、形態的な区別をつけるのが難しいため、また、分類学者が少ないため、分類がまだまだ進んでいません。また、海底などにも多く生息していますが、調査が難しいことなどもあります。
多く見積もって数億種と考える人もいますが、100万種かそれ以上と考えられます。

どこに棲んでいるの?

地球上の様々な環境に生息しています。海水中や淡水中などでは底の土壌中に、陸上では主に土壌中の土壌粒子の表面にある水の薄い膜状の中に生息しています。土壌中で、有機物を飲み込んで栄養にしているもの、細菌や酵母などの単細胞生物を飲み込んで餌としているもの、糸状菌の菌糸などの中身を針状のもので吸っているもの、植物の細胞の中身を吸っているもの、昆虫に寄生するもの、動物に寄生するものなど、食性も様々です。

一番大きな線虫は?

マッコウクジラ(Sperm whale)の胎盤(placenta)から見つかった線虫Placentonema gigantissima Gubanov 1951で、オスの長さ2~3.8 m(幅8-9mm)、メスの長さ6.8~8.4m(幅1.5~2.5cm)です。

線虫は強い?

高い乾燥耐性を持つ線虫


線虫の多くは乾燥に弱いですが、陸上部で生活する線虫の中には高い乾燥耐性を獲得したものも存在します。ゆっくりと脱水させると乾眠(anhydrobiosis)状態となり強い乾燥耐性を持つタイプ(ニセネグサレセンチュウなど)の他にも、生まれつき乾燥に強いタイプ(ナミクキセンチュウなど)も存在します。ジャガイモに寄生して被害を及ぼすジャガイモシストセンチュウやダイズに被害を及ぼすダイズシストセンチュウは、卵の中の2期幼虫の乾燥耐性が高く、数百個の卵を包むシストの状態で乾燥すると10年以上生存するものもいます。そのため、シストセンチュウは防除がしにくい線虫です。

低酸素・無酸素に強い線虫

回虫は、酸素分圧の低い小腸に生息するため、低酸素で嫌気呼吸によってエネルギーを作り出し、繁殖します。また、それ以外にも、無酸素状態で何週間も生存する線虫も存在します。
乾燥させて無代謝の乾眠(anhydrobiosis)の状態にすると、線虫は何年も生存できると考えられます。

線虫は地球上で最も繁栄している生物の一つ

線虫は地球上の様々な場所に生息しており、種数も多いことから地球上で最も繁栄している生物の一つだと言えます。